東京高等裁判所 平成4年(ラ)4604号 判決
右認定事実によれば、務が吉川に務自身の殺害を依頼した後間もなく死亡していること、務の「なるべく痛くない方法で、しかも死体がすぐ見つかる方法で殺して欲しい」という嘱託の趣旨のとおり、バスケス通りという死体がすぐ発見されうる場所で、しかも至近距離から頭部を銃撃するという死者に苦痛を感じさせる余地がほとんどない殺され方をしていたこと、務の殺害を自認する供述をしているフィリピン人の殺し屋がいることが認められ、このように殺害の嘱託と殺害の発生が時間的、場所的に密接な関係にあり、かつ、嘱託により殺害されたことを徴憑する事実があるような事情がある場合は、右殺害が偶発的なことを認めさせる特段の事情の証明がされない限り、務は、自らの嘱託により、同人が嘱託した人物によって差配され、右嘱託のあったことを聞知しているフィリピン人の殺し屋により殺害されて死亡したものと推認するのが相当である。
(鬼頭 渡邉 柴田)